むずむず脚症候群

特徴

  • 多くは60代~の女性に好発します。若年発症の場合はその半数に家族性があります。鉄欠乏性貧血、妊娠後期、パーキンソン病、腎透析の人たちに起こりやすい傾向があります。
  • 症状は夕方から特に就寝前など静かにしていると主に下肢に火照り感、不快感、虫が這うようなムズムズ感、なかには不快痛を生じます。原因は定かではありませんが、神経伝達ホルモンドーパミンの働きが悪くなっていると考えられています。ドーパミンを作るときに鉄が必要です。鉄の摂取不足、胃腸からの吸収障害は間接的な原因と考えられています。
  • むずむず脚症候群の多くは下肢不快感のため睡眠を障害されます。さらに約80%の方に周期性四肢運動障害を合併します。この病気は睡眠中に足首の関節をピクピクと背屈させる周期的な動きを繰り返します。この運動回数が多いと睡眠の質を悪くし熟眠感不足を来します。治療はむずむず脚と同じです。

治療

入眠時に足が火照る、足がムズムズ、イライラ、チクチク、ピリピリするなど不快な症状のため快適な睡眠がとれず生活に支障を来すことが多いです。軽症の場合は薬を使わずに改善できることもあります。多くの方は薬を使って治療を受けられます。原因は神経伝達物質であるドーパミンの働きが良くないため、体から一番遠く離れた下肢からの情報が脳に届きにくい状態となっているからです。したがって、治療は不足した鉄の補充、ドーパミンの働きを良くするお薬、ドーパミン受容体作動薬(ビシフロール、ニュープロパッチ)が使われます。特発性むずむず脚には、抗てんかん薬ガバペンチンのプロドラッグであるレグナイト錠が有効な場合があります。症状が夜間だけの場合は抗てんかん薬リボトリール、ランドセン、ガバペンが使われます。

なお、遅寝、カフェイン、アルコールは症状を悪化させますので要注意です。

薬の使用上の注意

ドーパミン受容体作動薬を長期内服する場合、4ヶ月~半年経つと、まれに、内服しているのに症状が悪化する、促進現象や反跳現象が見られることがあります。抗てんかん薬のリボトリール、ランドセンは、強い抗不安作用を持つため、睡眠障害を伴うムズムズ脚に好んで使われます。しかし、促進現象や反跳現象はドーパミン受容体作動薬よりも少し早く生じる傾向にあります。耐薬性、依存性に陥りやすく、少量処方にとどめる必要があります。ドーパミン受容体作動薬、抗てんかん薬、いずれも長期に内服する可能性が高いので、無断勝手に薬を増減しないように、注意する必要があります。

予後

むずむず脚症候群および高率に合併する周期性四肢運動障害の長期予後についての論文発表はいまだ十分なものはありません。むずむず脚症候群は神経伝達ホルモンドーパミンの機能低下と考えられています。同じ病因であるパーキンソン病、パーキンソン関連疾患との関連について経過観察する必要があります。

 

 

むずむず脚重症度スケール

ダウンロードはこちら⇒

ダウンロード
むずむず脚重症度スケール
むずむず脚重症度スケール.pdf
PDFファイル 167.1 KB


当クリニックでの『むずむず脚症候群』の症例は120例を超えました。

この記事は 一般の方にも症例に興味を持っていただくために、 診察時の患者さんの訴えをもとに

対談形式で構成したものです。


原因不明のかゆみで、血が出るまで足をかき続ける日々。

女性Kさん 聞き手:明神館クリニック スタッフX

X:大変な毎日だったそうですね。どんな症状だったのかお聞かせ願いますか。

K:右足の土踏まずが異常にかゆくなるんです。かゆくなってくると自分でも止められない程かいてしまい、血が出るのはいつものことで、酷い時には膿んでしまうまでかき続けます。

X:どのくらいの頻度で起こるのですか。

K:1週間に4日から5日で、1日に2回起こりました。特に夜布団に入ってすぐになる事が多かった気がします。

X:普段の生活ではどうでしたか。

K:仕事をしている時や歩いている時はかゆくなる事はなかったように思います。でも原因不明のかゆみに毎日不安でした。

X:自分で何か対処していたようなことはありますか。

K:市販のかゆみ止めを使ったことがありますが、一切効きませんでした。

X:治療のきっかけは。

K:かゆみのために眠れず、それが不安で来院しました。その際いただいたお薬を飲むようになると、いつの間にか足をかく頻度が減り、傷もきれいになっていきました。

原因不明の不快感のため、夫婦でケンカばかりの毎日でした。

男性Sさん 来院時74歳  聞き手:明神館クリニック スタッフX

X:奥様が当クリニックのパンフをご覧になったそうですね。

S妻:はい。受診のきっかけは、自分がフラフラ感とめまいで大田記念病院を受診したときにもらったむずむず脚のパンフレットの内容が、夫の症状と全く一緒だったことです。一目で「これだ」と思いました。

X:これまで随分ご苦労されたそうですね。

S妻:夫は、昼間は私に優しくしてくれていましたが、得体の知れないむずむず感といらいら感で、寝付きも悪く、夜になると半狂乱状態になり、二人でケンカばかりしていました。

X:何か対策はされていましたか?

S妻:夫は足のゴロゴロマッサージ器を3台買い換え、あん摩は何十年も使用、大阪に住んでいたときはしょっちゅう検査にいっていましたが、病名はわかりませんでした。歳を取ると症状はさらにひどくなり、本当に悩んでいました。

X:当院を受診されていかがですか?

S妻:処方を受けて以来、随分と症状が改善しました。おかげで夫婦の生活も円満で喜んでいます。ありがとうございました。

ドクターより
脚の不快感で医療機関を受診しても原因不明として処理されることも多いようです。 むずむず脚症候群は診断がつけば治療で改善する病気です。あきらめないで。

むずむず脚症候群のパンフレットは脳神経センター大田記念病院および明神館脳神経外科にて配布しております。

「不快感で正座が続かない」

女性Mさん 来院時39歳 聞き手:明神館クリニック スタッフX

M:5〜6年前から左の膝関節が痛みます。2年前からは左脚がしびれるようになりました。

X:だるさとか、火照り感、むずむず感はありませんか?

M:4ヶ月ほど前からふくらはぎがだるく感じるようになり、左脚全体に火照りや熱
さを感じるようになりました。最近ではピリピリする感じがあります。

X:日常生活の中で何か感じることはありますか?

M:不快感で、脚を曲げるのさえ辛く、正座を続けられないんです。さすがに日常生活に
支障があるので、来院しました。

X:むずむず脚重症度スケールで見ますと、かなり重症のようですね。

M:夜寝付くまで時間がかかるので、いらいらします。夜寝る時には足下に棒を置いて寝
ます。脚がむずむずしてくると、その棒で脚を叩いたり、主人や息子にマッサージし
てもらってます。主人や息子から「こっちが眠れなくなる」と不平を言われます。

X:それは大変ですね。

M:寝てもすぐに眼が覚めますし、困ってます。

X:むずむず脚症候群は、睡眠障害の原因にもなり、放っておくと他の疾患につながりか
ねません。きちん治療できる薬がありますので大丈夫ですよ。

ドクターより
この患者さんの場合ドパミンアゴニスト処方で顕著に改善し、以前のように棒で叩いたり、ご主人や息子さんにマッサージしてもらわなくても眠れるようになったそうです。 むずむず脚症候群の原因ははっきりとは判っていないのですが、放っておくと症状は悪化し、睡眠障害や他の疾患を誘発します。また精神的にもよくありません。よく効くお薬がありますので、むずむず、ピクピク、イライラ等の症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

「肘がむずむずする」

男性Kさん 来院時61歳 聞き手:明神館クリニック スタッフX

K:10年前にもなるでしょうか、寝る時に肘の関節周辺がむずむずしてかゆみを感じるよ うになりました。じっとしていられない何ともいえない感覚です。
原因がわからない ので、インターネットで調べました。そこで明神館脳神経外科を知りました。

X:症状はどのくらい続きますか?

K:寝る前にだけ起こるんです。気にすると余計眠れなくなります。

X:日中の眠気はありますか?

K:ありますね。夜寝付きが悪く、熟眠感がないんです。
夜中に足もみ機で腕を揉んでい ました。ひどい時は夜中の2時や3時になるまで眠れません。

X:脚がむずむずする感覚はありますか?

K:右脚の付け根から足首にかけてピリピリする感覚があり、歩きにくい時があります。 特に右手はむずむずしてかゆいです。左手にも時々むずむず感があります。

X:お酒やたばこはいかがですか?

K:やります。コーヒーが好きでよく飲みます。

X:むずむず脚症候群の原因のひとつにカフェインがありますので、コーヒーは控えめに された方がいいでしょう。お酒やたばこも同様です。

ドクターより
この患者さんの場合、肘にむずむず感が生じています。このようにむずむず脚症候群は、脚だけでなく腕や肩、中には背中などにむずむず感が生じることがあります。 むずむず脚症候群はお薬の処方で顕著に改善します。Kさんも「よく効きます」とびっくりされていました。お薬がよく効くのもこの病気の特徴です。