小児片頭痛

小学生、中学生の頭痛は、結構学業に支障をきたします。朝起きた時から頭痛があり、学校を遅刻したり、休んだりします。学校では、窓際の明るい席を嫌がったり、晴天の日の体育の時間を嫌がることもあります。頭痛だけでなく、光が過敏であったり、音が過敏であったり、フワフワめまいを訴えたりします。頭痛でお困りの子供さんの多くは、夜10時以降に寝ており、就寝時刻が遅い特徴があります。 多くの場合、9時就寝にするだけで頭痛の軽減がみられます。天井照明を撤去しスタンド照明に換えるだけで頭痛の軽減する場合もあります。

 

 

ランドセル頭痛

ランドセル症候群のなかに小児片頭痛があります。片頭痛は運動負荷によって誘発されるため重たいランドセルを背負っての登校は頭痛の誘発因子となり登校したものの保健室へ直行する事態となります。単なる横着病ではありませんので養護教諭、親共に小児片頭痛を頭の片隅に置いておく必要があります。

 

保護者へのお願い

 ・頭痛の原因は多くの場合体質遺伝と遅寝にあることを理解してください。

 ・子供の年齢ごとの必要睡眠時間を知らない親が多い。

 ・小学生では9時就寝、6時起床、9時間睡眠は基本目標です。低学年は10時間睡眠が必要です。

 ・子供だけでなく家族全員が早寝習慣に努めてください。

 ・脳は睡眠中に記憶を作る作業をしています。

 ・成績の良い子は早寝し、9時間以上の睡眠を摂っています。

    ・父親の協力を得て、天井照明は、8時に消灯してください。

 

生活環境の改善

 ・怖いほど減った子供の睡眠時間 不必要に明るい子ども部屋

 ・家族の協力はとても大切です。幼稚園児までは8時消灯、小学生は9時消灯、中学生は10時消灯してください。

 

治療は

まず生活習慣の改善が大切、次に薬物治療です。

薬物治療は頭痛時の頓服治療と予防治療の2種類があります。

まずは頓服治療を選択します。頓服治療の第一選択はイブプロフェンかアセトアミノフェンです。アセトアミノフェンは即効性はありますが、有効率はイブプロフェンが勝ります。第二選択はトリプタン製剤です。なぜか小児には点鼻薬が効果的です。トリプタン内服薬は効果が劣り、無効例も稀ではありません。

小児片頭痛の予防治療薬として有効性が認められているのはアミトリプチリン、バルプロ酸ナトリウム、次にトピラマート、プロプラノロールなどです。 

 

類似疾患として

片頭痛によく似た症状を呈する病気として、睡眠時頭痛があります。昔は目覚まし頭痛と呼ばれていました。日中は頭痛がないのが特徴です。片頭痛予防薬のバルプロ酸が有効なことから、今は片頭痛と考えられています。

小児頭痛には起立性調節障害 OD があります。時に片頭痛や緊張型頭痛と誤診されることがあります。詳細な問診と OD テスト、シャロンテストが必要です。厄介なことに、起立性調節障害ODと小児片頭痛の合併例は珍しくありません。

腹部片頭痛があります。腹痛を主訴とし顔面蒼白となり悪心嘔吐で受診します。対症療法で様子を見て多くは自然緩解します。成長して片頭痛を発症する場合もあります。その他稀に小児慢性疲労症候群などがあります。

実際に外来診療で使用している小児片頭痛の説明パンフレット(PDF)

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【参考資料】

👉 アセトアミノフェンについて


症例紹介

症例1:学校生活が困難になった14歳

男子中学生小学生の頃から、耳の聞こえが悪くなり、中学生になった頃から頭痛が始まりました。学校の人間関係の関係で、学校に行けなくなり、さらに頭痛がひどく、十分な睡眠がとれなくなりました。最近は、毎日頭痛があり、フワフワめまいも出てきたため、明神館クリニックを受診しました。睡眠時間は、23時に布団に入り、4~6時間程度。寝付きが悪く、夜中に目が覚めます。寝相が悪く、怖い夢を見ます。寝る前は、いつもパソコンで動画を見ながら寝ています。大田先生から、「視力、聴力に症状が出てきています。あなたは、明神館始まって以来の大ものです。脳は疲労困ぱいしています、勉強どころではありません。睡眠不足の上に、睡眠中に頭痛発作を起こし、睡眠の質が悪くなっています。今あなたは間違った生活をしています。寝なければどうにもなりません、逆に言えば、寝れば症状は治まります。身体、心の成長で今が一番大切な時期です。このままでは、失うものが大きすぎますよ。」と言われ、詳しい説明を受け、2種類の予防薬をもらいました。受診後、早く寝るように努力し、ひどい頭痛は起きなくなっています。今は、学校の人間関係も改善し、登校できており、修学旅行を楽しみにしています。睡眠の大切さを教えてもらいました。

 

症例2:頭痛、日中の眠気で困っていた16歳 

男子高校生中学生の頃から頭痛がありましたが、特に痛み止めを飲むほどではありませんでした。高校生になり、少し疲れ気味、一旦仮眠をとり、夜中に課題をするという生活、睡眠時間は1~7時の6時間程度、熟眠感がなく、日中に眠気があるため、授業中に寝てしまい、先生から注意を受けるようになりました。体は、いつも疲れていました。この度、いつもの頭痛よりも痛みが強く、頭痛薬を飲んでも効果がないため、明神館クリニック大田先生を受診しました。頭痛は、時に起床時からあり、フワフワすることもありました。先生より、昼間眠たいのは、睡眠中に頭痛発作を起こし、睡眠の質が悪くなっているからであること、早寝し、しっかり睡眠をとれば、成績は向上し、心も体も成長することなどをうかがいました。規則正しい生活を送ること、それに少量のお薬を内服することで、症状は軽快すると言われました。お薬を飲み始めて2週間、頭痛、めまいは治まり、学校にも行けるようになりました。先生の言葉を信じて、10時には布団に入るよう、努力しています。

 

症例3:照明を暗くしたら頭痛が激減した4歳の女の子

夜泣きが治まってほっとした3歳位から、頭に手を当てて難しい顔をするようになりました。4歳頃から頭が痛いと訴えるようになりました。大田先生の指導を受け、夫の協力を得て、20時になるとすべての天井照明を消しました。子供部屋は足元を照らす豆電球だけ、自分たちの部屋はスタンド照明だけ、夫は好きなテレビも止めてくれました。娘はぐっすり10~11時間眠るようになりました。頭痛は言わなくなり、顔元は元気になり、動作も活発になりました。天井照明やテレビがこんなに悪いことを初めて知りました。おかげで、親まで元気になりました。ありがとうございました。

 

症例4:太陽が眩しくて登校できなくなっていた15歳男の子 

母親からの聞き取り大田先生から、生活環境の是正指導を受け、反省する点が多々ありました。不登校児と思っていましたが、先生から学校へ行く意欲はあるのだから、俗にいう不登校ではない。光過敏症のために学校に行けなくなっている。その理由は、慢性の睡眠不足により脳が疲れ、頭痛や光過敏を訴えているのですと言われました。 受診後すぐ、明るいところだけサングラスになる、光過敏用のサングラスを作ってもらいました。サングラスになってから頭痛を訴えなくなりました。薬は全く飲んでいません。飲ませたくないのと、必要ないので、サングラスでよくなったから、このまま様子を見たいと思っています。睡眠に関しては、今は試験期間中でゲームはしていませんが、まだ早くは寝ていない様子です。できるだけ22時を目標に就寝させたいと思っています。学校へ意見書を書いて下さったのもとても嬉しく、感謝しております。子供が元気で毎日学校に行くようになり、ありがとうございました。

 

症例5:母親の頭痛遺伝子を受け継いだ9歳女の子  

母親からの聞き取り小学校に入った頃から数ヶ月1回程度頭痛を訴え始めました。特に生活に支障はありませんでしたが、段々と腹痛と頭痛が増えてきて、学校を休むこともあります。友人とのトラブルがあり、その関係か特に頭痛の頻度が増えました。トラブルは解消しましたが、頭痛が続くため、明神館受診しました。大田先生から、私(母)からもらった遺伝性の頭痛であること、一番の治療は睡眠であること、部屋の照明を暗めにすること、家族が協力し21時にはテレビを消すこと、ストレスを溜めないことを指導していただきました。粉薬は飲めるかと聞かれ、飲めますと答えました。先生は、粉薬だと自分で量が調整できるから粉にさせてもらいたい、頭痛の程度で自己調整してみて下さいと言われました。薬を飲み出して、頭痛は軽くなっています。ありがとうございました。症例6:大学に無事合格した18歳女の子 小学生の頃から光が眩しくて、週末になると頭痛が起きていました。高校生になった頃から症状がさらにひどくなり、首こりやフワフワめまいが出てきて、音も苦手になってきました。市販薬を内服しても効果がなく、学校で嘔吐することもありました。生理痛もひどく、保健室に行くことがよくありました。頭痛をなんとかしたくて明神館を受診しました。大田先生からお薬を処方され4週間内服したら、吐くような頭痛がなくなり保健室に行かなくなりました。鉄欠乏性貧血や便秘も治療してもらい、調子が良くなって、大学受験をして希望の学校に合格しました。今1人暮らしを始め、目標に向かって頑張っています。ありがとうございました。